Cafe 奥原商店 目撃!自家焙煎の現場

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コーヒーの自家焙煎てよく聞くけど、実際の現場はどうなってんだろー、と、勝手を言って見学させていただきました。

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まずはロースターに生豆を投入
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そしたら火をつけ、くるくるくるっと結構な速さで回していきます。手前のバットは焙煎した豆を入れるところ。
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手元に寄るとこんな感じです。
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焙煎具合を確認の図。回しては耳でハゼ具合を目で色を確認、何回も繰り返していきます。
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話しかけにくい感じなのでちょっと離れます。ロースターからは煙が上がり、いま、とても良い香りに包まれています。
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それなら後ろから見ちゃお。
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焙煎完了の図。焙煎した豆を余熱で意図しない深煎りにならないようにバットに置いて冷まします。
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そばに寄るとこんな感じ。月並みですがうまそう。
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チャフと言われる豆の皮を取ったり、きれいな状態にしてから瓶へと保管。
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本日の焙煎はあっさり、いつもしっかりしか飲まないのでちょっと残念。と、思いきや、焙煎当初は豆から二酸化炭素がたくさん発生している状態なので翌日から数日間が飲み頃らしいです。

奥原商店が自家焙煎をするのは(お客様から)「美味しいですね!」と言ってもらえるなら、誰かにやってもらったものを提供して褒められるより、自分たちで創ったものを評価されたい、ということで、このように手間を掛けているそうです。

実際、大変だと思います、豆をローストするのって。

傍で見ていると慣れた手付きでサッサッサッとやっちゃってますが、これを何日かに一度やるわけです、奥原商店の場合「あっさり」と「しっかり」があるので両方ですね。仕事とはいえ自分だったら豆の配合だけ伝えてロースターに頼んじゃうかも、その方がラクチンだし、なんだったらコーヒーマシンも導入して「はいっ、らっしゃい、ブレンドですね!おまちっ!」とやったほうがいいのでは、と、疑問を持ったのでちょっと調べてみました。

なんとですね、平成に入ってから喫茶店、カフェの店舗数は半減したそうです。

総務省の統計によると、

1991年 平成3年 126,260店舗
2016年 平成28年 67,198店舗

参考までに喫茶店、カフェがもっとも多かったときは、
1981年 昭和56年 154,630店舗 だそうです。

その一方でコーヒーの消費量は増えています。

コーヒーの輸入量(生豆換算)だと、

1990年 平成2年  324,841トン
2017年 平成29年  458,961トン

1981年に喫茶店がもっとも多かったのは喫茶店ブームによるものでした。
紅茶の美味しい喫茶店なんて歌もありましたね。

このブームが消え去った理由は、

・喫茶店にコーヒー豆を卸すロースターが「コーヒーの味を変えるとお客さんが逃げますよ」と商売優先のロジックで敷衍した、
・店舗がロースター依存でコーヒーに対する勉強をしなかった、また、蒸らし機能の無い安価なコーヒーマシンの導入を進めた、

このことで多くの喫茶店は原材料であるコーヒー豆の品質、抽出技術の両輪を失ったわけです、喫茶店のメイン商材であるにもかかわらず。

コーヒーはいわゆる「3たて」と言われる、煎りたて・挽きたて・淹れたてが一番美味しいと言われています。

お客さんの口は正直です。

そして、まずいコーヒーから逃れたコーヒー好きは「自家焙煎店」や「コーヒー専門店」を選びはじめます。

時代は移ろい、喫茶店からカフェ文化へと変遷、今度は女性がコーヒー消費を引っ張りはじめました。

たとえばシャポー本八幡にあるクイーンズ伊勢丹のコーヒー売り場を見ると、そのメインに置かれているのは葉山「PAPPA NINO」の豆とプライベートブランドの豆。UCCでもキーコーヒーでもないんです。まさに消費志向の変化、スペンド・シフトです。


ロースターとしては商売として生活者をスライス・オブ・ライフで見るとなんとしても豆を売りたい。
けれど、国内店舗数ナンバー・ワンのスターバックス、2位のドトールも店舗で豆は殆ど売れていない、彼らが期待したほどには。。。

そもそもコーヒーを飲むのは自宅がほとんど。その次が職場や学校。

当然、スターバックスもドトールも自家焙煎をするロースターなので豆を売りたいですよね。しかし、カルディは輸入食材店となり、ブルックスに至っては実店舗を持たないネット販売。そして丸山珈琲やサザコーヒーはスペシャリティ・コーヒーに注力する、つまり選択と集中です。

カフェビジネスはフードコスト(食材)、レイバーコスト(人件費)、レンタルコスト(地代家賃)の3つのコストの合計が売上の7割以上あると相当キツイらしい。実店舗を持つとアルバイトの時給が1000円(平成30年10月1日現在 東京都の最低賃金は985円/時間)、ネットで豆を売るのがどれだけ利益率がいいか。けれど、実店舗での評価がないとそもそもの豆を評価してもらいにくい。

だからロースターも自ら店舗を持ち、テイスティング・バーと称してイートインができるようにしているところも増えています。たとえば両国の Single O Tasting Bar はその顕著な例でしょう。あるいは墨田区の自家焙煎珈琲ショップが集まってできた“すみだ自家焙煎珈琲店連絡会”には珈琲教室を開催する店舗もあります。

生存戦略として教育に手を出すのは賢い選択だと感じます。知識を啓蒙してブランド・エクイティを獲得する、かつて化粧品メーカーが若年層に対して行った施策と同様です。こちらはプチプラの台頭でちょっと怪しくなってきましたが。

とはいえ最近、僕が自宅で飲むのはネスカフェゴールドブレンド深煎り、インスタントコーヒーです。本物が飲みたくなったら、ふらっと奥原商店へ行けばいいだけなので。

参考文献
・総務省統計局 統計調査部 経済基本構造統計課 経済センサス 基礎調査結果 喫茶店の「いま」
・厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部生活衛生課 喫茶店営業の実態と経営改善の方策
・三菱UFJリサーチ&コンサルティング コンサルティング事業本部 大阪ビジネスユニット 経営戦略部 第12回喫茶店のデータを読み解く
・経済産業省 ミニ経済分析 飲食関連産業の動向

おまけ

奥原商店のメニュー、これですが、どうやって書いたのか尋ねてみたらば、PCフォントをトレースしたそうです。なんともキュートな書体でいつも気になっていたんです。マダムの手書きかと思ってました。でも書いていたのはマスターです。で、ですね、マスターはこれをフリーハンドで書けるようになったそうです。ちなみにこの雪だるまもマスターの手によるものです。

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こっちはトレースしたもの
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左下の4行、マスターのフリーハンドです。カリグラフィーの世界です。

本日の一杯はこれ、しょうががピリッと効いていて暖まります。

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あの、ドタバタ筒井ワールドというよりファンタジーな世界観。透明感のある表現がとても良かった。ストーリーの中にコーヒー豆を育てていくシーンがあります。主人公ラゴスが馬とともに空を飛ぶくだりは本当に自分も飛んじゃうかと思いました。