すみれのボタンを勝手に広告、と制作奇譚。

そもそものきっかけは、本八幡botは「なぜ、このボタンにこんなに心を砕いているのだろう?」ということでした。それを知りたくて彼に話を訊き、解されていく謎。そして、ああ、そういうことだったんだね、と、自分の中で解決したかったんです。

じゃあ、本八幡botが、そもそもすみれのボタンの販売を始めた理由をそのまんま映像にしちゃえばいいじゃん、とつくったのが「#1 はじまりのストーリー篇」でした。これの制作当初から今回の「#2 共感する仲間篇」の構想はありました。

マーケティング的には、#1は「なぜそれを始めたのか?」というマーケットにおけるポジショニングの大前提と共感ポイントの訴求を目的として制作しています。そして#2は「ブランディングと商品訴求」です。

調べてみると、ボタンをつかったアクセサリーなど、手芸の市場規模は約4000億円、ゲーム業界の市場規模が約4500億円ですから、かなり大きなマーケットを持っているという事がわかりました。手芸が一般に流行り始めたのがリーマン・ショック以降、世知辛い世の中で手芸に癒やしを求める人が増えたということらしいです。行ったことないですが、手芸カフェなるものもあるらしく、連日賑わっているそうです。

また、手芸の売りはいわゆるレシピということも知りました。

こういったファクトとデータをもとに考察し、映像のイメージをストーリーボードに落として本八幡botに見せました。そして「つくりたい!」との承諾を得たのであとはプロダクト、クリエーティブに落とすだけです。

とはいえ予算はゼロ。モデルのキャスティングは本八幡botにお任せして、自分は監督・撮影・編集・MA、楽曲の手配とナレーター探し。仕事だったらプロデューサーや音効さん、カメラマン、編集マンなど数人で分担するところです。ちなみに照明は本八幡botにお願いしました。

撮影的には#2より#1のほうが時間がかかっています。だってbotは絵にならないから。。。本八幡、と、いうことが一発でわかるような場所を探してのロケハンが一番時間がかかりました。そして撮影当日は降りの激しい雨でした。天気は人柄が出るのよ。

撮ったらあとは編集です。PCでとも考えたのですが、PCだと何かと時間がかかるので、仕事でしょっちゅうスタジオに入るから、スキマ時間に編集機を借りてサラサラっと済ませました。ちなみにスモークという編集機で編集し、カラコレという色調整(最近はカラーグーレーディングとも言います)はダヴィンチリゾルブで行いました。

このカラコレ、一般に広く使われているのが、ハリウッドグレーディングというやつで、人物をオレンジ、背景を補色のブルーにするというもので、こうすると人物が引き立つんですね。ほかには、アクションだと黄色、SFはグリーン、サスペンス系はブルーとかが標準的です。

もちろん、服の色や肌の色を変えたりとかいろいろとできるのですが、ぼくはトランザクションやエフェクトが好みでないので、#2では情緒的な光が欲しく、現場でそういう光をつくって撮りました。

今回の場合は#1ではブルー系、#2では始まりから終わりにかけて冷たい色から暖かい色味へと徐々に変えていっています。映像は連続した静止画の繋がりなので、映画だと1秒間に約24枚、テレビCMや今回のような動画は1秒間に約30枚の静止画で構成されています。その一枚ずつを調整することもできるし、このへんからこの辺まではこういう色味みたいな処理もできます。

また、編集機と言ってもスモークというソフトです。Adobe Premiere ProやFinal Cut Proと同様にPCでも動くのですがそれなりにマシンスペックが必要で、スタジオでは映像編集用にチューンしたLinuxの上で動いています。

ナレーターはこれまた、すごい方にお願いしています。棚村華恵子さんという方で、本業は画家なのですが、お会いしたときに初めて声を聞いて、ミケランジェロとかベルニーニが人間の女を創ったら声はこれだろう、と、いう声をお持ちだったので「その声を少し分けてください」と、恐る恐るお伺いを立てたところご快諾をいただけたという。ないよね、画家にナレーションを依頼するって。普通は「先生、そろそろ新作の方を一幅」とかお願いするものです。言われた方も快諾どころか怒るだろう普通。

リクエストは「すみれのボタンと一息でロゴ感が出るようにお願いします」と、これだけお伝えしたら、一発でわかっていただけてワンテイクで終わりました。

モデルは本八幡botの伝手でこの方にお願いできました。授業がある日の早朝から集合させれられて、「はい、じゃ撮りまーす」、と、くるくる回れだの、もっと腰を入れてステップを刻んでとか、未来を見つめて、過去を振り返って、髪をまとめて、解いて、髪をふわふわっとしてだの、無茶振り百連発に笑顏で対応していただき、「こうして」って伝えるとバリエーションを付けて返してくれたり、「それいいっ!」っていうと覚えていて、そこへアレンジを加えてくれます。とても勘の良い頭の良い方で、撮影そのものは正味40分程度で撮了できました。仕事でもムービー2時間、スチール1時間というのがタレントさんや女優さんを撮影する時に事務所からもらえる時間なので異例の速さです。

ということで「#2 共感する仲間篇」は文字通り、制作陣も共感した仲間たちの快い協力をいただけて完パケ・納品と相成ったのでした。

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