#10 19のおしり、30の、後ろ襟。

「見てみろよ、この、人人人・・・」
「はあ。。」
「このまた後ろに二人ずつ両親がいて、そのまた後ろに・・・。」
「何が言いたいの?」
「しかも彼らは血縁とは別に放射状の交友関係を持ち時にそれを交差、共有しているという・・・」
「津田。おれは今から水着を買おうと思う。それは何のためだ?」
「奈津美ちゃんとの将来のためだ。」
「明察。一歩進んでそこに渋谷を往来する男女の両親や無数の友人たちが関係ない事はわかるか?」
「うむ。これはお前と奈津美ちゃんだけの、一対一の、がっぷり四つの、のっぴきならぬ問題だ。」
「素晴らしい。そして僕と君とは親友だ。」
「申し訳なかった。行こう。君だけの水着を探そうじゃないか。」

とまあ渋谷の津田は相変わらずこんな感じ。

しっかしあつい。あっづい。とけるー。

もし今日由比ヶ浜が曇っていたら、CO2排出枠ばりにこのピーカンと交換してやりたい。
にしちゃあ、近過ぎるか。

津田。君の言うとおりここには色んなやつがいて、色んな至らんコトを考えているんでしょう。
しかしね、キミ、駅前のモアイの前にも、ツタヤの前にも、きったない坂のたもとにも、
どこを探したってまあ、奈津美以上のオンナはいないね。
学生時代なんか、渋谷、新宿に始まってさ、
最後は大宮駅のロータリーまでナンパしに行ったこともあるのに、
奈津美はどこにいたんだろう。

京都だ。

京都だった。

うしのほねとか言ってたなー。

多分学校で二番目ぐらいにイケてるサークル入って、こじゃれた飲み屋とかでバイトして、
店長とかいう若い男に気に入られたり、時々二条城とかで庭見たり、
おれとはちょっと違うカタチで、若さをエンジョイしていたに違いない。ぐぬぬ。。。

見たかったなー。19歳の奈津美のおしり・・・。

本当にもう、男ってのはほっとくとろくな事考えないね。
あれだよ?この場合の「おしり」ってのは、形而上学的な意味だよ?
「母なる大地」の、母的なニュアンスだから。

津田の手引きで、買い物はさくっと終了。
初めてセレクトショップで買っちゃいましたよ、水着。
んで引き続きアンダーウェアを物色。勝負パンツね。決勝戦用のやつ。

「これどうすかね?」
「俗悪!」
「これは?」
「醜悪。」
「こっち?」
「趣味悪。。。」

そこまで言うかね・・・

でもさ、パンツ買うときって(特に用途がはっきりしている場合)、第三者が必要かもね。
露骨な心理がパンツに表れたりしたらさ、強烈すぎるもん。はく場所が場所だけに。
男の場合、日常の象徴だもんね、パンツって。普段からダサくないです、みたいなさ。
息をするようにオシャレです、みたいな。そんな感じ出したいじゃん。

「それでお前は、つまるところ奈津美ちゃんとどうなりたいわけ?」

夕飯に、津田の行きたがった串カツへ。
ソース二度づけ禁止って、物足りなかったら、どうすんのよ、って思ってたけど、
津田いわく、キャベツですくって、かけるんだってね。初めて知りましたよ。
んで実践してたら、ふと、こう訊かれた。

「奈津美の将来に、おれの居場所がほしい。」

うずら食いながら、何言ってんだろうね、おれ。
でも奈津美に対しては、これ以外の言葉が何とも・・・

「結婚したいってこと?」
「あのなあ、寝てないどころか、水着の跡も見てない女と結婚しようと思う男が、どこにいる。」
「それで海なわけかあ」

奈津美と、結婚???、結婚ねえ・・・

奈津美にはぴんときてるけど、結婚てのがどうもね。
まあ。何というやら。カタチじゃないよね、大切なのは。
今度の海が、ふたりの将来にとって重大な意味を持つのは、(おれの中で)確かなんだけど。

「ところでお前さ、、」

ししとうをかじりながら、津田がジョッキに残った一口を片づける。

「今日は奈津美ちゃんと競るくらい、佳代子さんって人がよく出てくるじゃない。」